はじめに
この記事は前回の続きとなっております。
下記リンクから飛べますので、まだ見てないよ~という方はこちらからご覧ください!
二分割したのに、本記事は前回の二倍の文量になってしまいました。
それもこれも、この作品があまりに面白すぎるから!
というわけで今回も感想、語っていきますよ~。

第一試合
というわけで始まってしまった全学大会第一戦、カルタのお相手はエジプト神話系の魔法を扱うヘテフェレス=メン=ネフェル。
この作品では、アナスタシア、ナタレーナ姉妹もエジプトのアヌビス神を使っていましたね。
他の鎌池作品でエジプト神話といえば、とある魔術の禁書目録のネフテュスが思い浮かびます。
あと何気にアレイスターも関係が深かったかな。時代をイシス、オシリス、ホルスとエジプトの神々を用いて表していますしね。
あと未踏召喚://ブラッドサインのセクルティティもエジプト系だったはず。そう考えると鎌池作品、かなりエジプトとの関わりが深いですね。
さて、そんなヘテフェレスについて、アイネとマリカが試合中にこっそりカルタへ情報を伝えます。
ヘテフェレスはエジプト神話の二大系統のうち、オシリス系の巫女。現実の生き物をミイラ化することで対応した神の力を間接的に引き出している、と。
その情報やレトネーエさんから学んだ戦闘技術をもとに、カルタは徐々にヘテフェレスを追い詰めていきます。
やはり鎌池先生は、異能攻略戦を書くのがほんと上手い。そして戦闘描写において鎌池先生がもうひとつ卓越しているのは、その場にあるものを活用して戦う描写。
このあたりは、異能バトル系の作品はもとより、ヘヴィーオブジェクトなどの異能が絡まない作品等でも培われた技術なのでしょう。
今回の試合であれば、リングを囲む爆発するロープ。こいつの活用が、勝負を分ける決め手となりました。
試合開始直前にカルタが利用して、試合決着直前にヘテフェレスが利用した。文字通り、ロープに始まりロープに終わる、という試合内容でした。
最後にカルタがロープを掴み、被害を最小限に押さえるという、世界最強らしい堂々としたラストとなった本試合。
周りは彼を「ヘテフェレス選手をフェアに守った」と脚色し、カルタは「自分のためだよ」と罪の告白をします。
このシーン、地の文で『等身大の少年』と書いていますが、私はこう言いたい。
等身大の少年はそれが有効とわかっていても、一瞬の判断で爆発するロープを自分から掴みに行くことなんてできないんだよ!
もうね、カルタの戦い方があまりに悲痛すぎて・・・
やっぱり、世界最強とか15歳の少年の肩に乗せていいものじゃありませんよ。キラキラとした言葉尻に反して、最強の実情は泥臭くドロドロした道を懸命に歩いている少年少女なんですから。
そうして辛くも終わった第一試合。アイネがカルタに対してこう言います。「心配もしました」と。
これについてアイネ本人は「マリカがいつ暴走するか」と言っていますが、十中八九本音ではカルタに対する心配ですよね。
アイネは感情を獲得しつつある。これが今回の第三試合に関わってくるのですが、そちらについてはまた追い追い。
第二試合
さて、第二章は陰陽道を極めた魔法使い、丹波結ちゃんの話から始まりました。
3ページに渡って彼女の魔法が説明され、「ふふっ、少々やりすぎてしまったかしら?」という強キャラにしか許されないセリフとともに、即オチ2コマでボコボコにされ、その後一切の出番なし。
新約とある魔術の禁書目録13巻のフィアンマさんかな!?
いやもう、この3ページ絶対必要なかったでしょう(笑)
でもこのポンコツ感わりと好きなので、今後再登場してほしいですね。まあ、出ないんでしょうけど。
あと、地味にWikipediaの登場人物の欄に載ってて笑いました。ほんと、wikiって隅々まで行き届いているなぁ(笑)
それはともかく、カルタの第二試合の相手はアサバスカン=リオグランデ。ネイティブアメリカン流の呪術師です。こいつがまぁ、かっこいいんですよ。
装備は分厚い防弾ジャケットに運動補強用脚部パワードスーツ、そしてショットガン。しかも彼、経験豊富な傭兵とのこと。
いや、どうやっても勝てるビジョンが思い浮かばないんですが!
それでもカルタはどうにか相手の魔法を逆に利用することで有利に立ち回るんですが、この男の真骨頂は追い詰められてからなんですよね。
なんてことはない、子供用の防犯ブザー。
傭兵である彼を心配して、そんなものを渡してくれた誰かのために、アサバスカンは最後の最後まで足掻きます。
物理的に強く装備も万全、魔法も有用で準備も怠らない、それに経験も積んできた彼が最後に見せた真価は、心の力だった。それこそが本当の魔法だと。
そんな彼に、カルタは称賛を送ります。
「世界最強が認めるよ。アンタは間違いなく、俺にはできない事を成し遂げた」
試合終了。勝ったのはカルタですが、アサバスカンはこの巻で最も彼を追い詰めた魔法使いだったのではないでしょうか。
第三試合
さて、第三試合ですが・・・こちらは試合前にいろいろありましたね。
具体的には、敵の策略によってアイネがコンテナ事故を起こしたという映像が流出したのです。
厄介なのは、アイネが必ずしもやっていないと断言できないこと。
仮にアイネが敵側に操られていたら・・・? という疑念がクラス内に渦巻きます。
そこでカルタは、アイネの無実を証明するためにとある命令を下します。「俺の首を斬れ」と。
それを受けたアイネは・・・
泣きながら、自身の腹を切りました。
少し前、カルタはアイネと指切りげんまんしたのです。
「俺とお前はお互いを傷つける事はない、困った事があったら必ず駆けつける」
アイネはその約束を、機械的な命令よりも優先した。
だから彼女は、カルタを傷つけることができなかったわけです。
やはりアイネは、感情を獲得していた。でもそのことを、こんな形で突きつけられるとは・・・
鎌池先生、ほんと人の心がない。いや、むしろあるから書けるのか。
このシーン、ほんと読んでて辛かったです。
カルタ、アイネ、マリカ、クラスメイト・・・この場にいた全員の気持ちを考えるともう、マジで胸が痛い。
結局、あの映像は第三試合の相手マキビュラ=デルフォイの取り巻き、オルフェウスの楽団が加工したものだったようですね。
それなら話は早い。試合相手ではなくその取り巻き相手なら、場外乱闘で倒しても大丈夫なわけで。
そこからは怒涛の展開。クラスメイト総出で、世界最強の水晶魔法がオルフェウス楽団を追い詰めます。
そう、クラスメイト総出で。つまり・・・
「自分が傷つくよりも目の前で失う方が、もっと怖い。だからもう一度戦う!!」
そんな決意と共に現れたのは松田イミ。
ここはほんと、涙なしには読めませんでしたよ。前巻であんな目にあって塞ぎ込んでしまった彼女が勇気を振り絞り、今度は自分の意志で、仲間のために立ち上がったのですから。
アイネの想いとイミの決意。この章は4巻の中で、最も熱い展開の多い章だったと思います。
トーナメント外の戦いが一番熱いあたりは鎌池先生らしいなとは思いますけれどね(笑)
決勝戦と黒幕の正体
決勝戦の前に、黒幕の正体についての話がありました。
この全学大会のルールを書き換えた誰か。そんなことをするためには、天外四神本人のDNAデータが必要です。そんなことが可能なのは・・・
そう。答えはシンプルだったのです。考えるまでもなく、当たり前のこと。
でも何より、考えたくないことでした。つまり。
彼らの家族。悪意など微塵もない、身内である天外四神を応援する純粋な善意こそが、黒幕にDNA情報を流した者の正体でした。
いや、エグすぎるだろ・・・。
たしかに冷静に考えればそうですよ。カルタたちのDNA情報を簡単に入手できるのは誰ですか? と訊かれたら、そりゃあ一番わかりやすいのはその身内ですよ、ええ。
でもそれをほんとにやるかね。本日二度目になりますが、マジで鎌池先生、人の心がない。
当然、カルタたちはショックを受けます。あの表参道キョウカですらかなり精神的ダメージを受けてるっぽいのがかなりキツい。
そして、そうしている間にも試合は始まってしまいます。
決勝戦。対する相手は、ペンデット=デンパサール。あとがきで鎌池先生が書いていた通り、『普通のオカルトが一番怖い』といった感じの相手。
この戦いでカルタは「余計なものを混ぜたり背負ったりしないで、ただただ純粋に戦う」気持ちを知ります。
うん、やっぱりカルタはいろいろ背負いすぎなんですよ。これまで多くの戦いを経ておきながら、その戦いはすべて重苦しい戦いばかりでしたからね。
そうして、最後にはカルタの拳とペンデットの蹴りが交差して戦いが決着します。
勝ったのはカルタ。しかしペンデットは倒れる間際、不吉な予言を残します。
魔女ランダが善獣バロンを粉砕し、世界の活動を表す神の舞が止まった。『そういう』世界の終わりを読み取った、と。
斯くして、モヤモヤしたものが残りつつ全学大会は終わりを迎えました。同時に『脅威』のことについて新たな情報が判明します。
脅威の総数は三億。そんなもの、人類にどうこうできる数じゃない。
しかし、それに対処する唯一の方法がある。それは・・・
世界一位という分かりやすい疑似餌を軌道エレベーターで地球から放り捨てること
いやもう、ここまで来ると笑うしかないです。
鎌池先生、本当に人の心が(以下略)
どれだけ過酷なんですかこの世界は! これじゃあカルタ、本当ににえさまだよ・・・。
正直この世界、詰んでるとしか言いようがないんですが。そしてカルタ、どちらの道を決断してもこれまで以上に地獄な人生歩みそうで怖い・・・。
カルタに救いはないんですか!!! もうこの巻、何度そう叫んだことか。
鎌池先生のことだからハッピーエンドにしてくれるとは思うのですが・・・そこまでの道のりが怖すぎる(ガクブル)
おわりに
そんなわけで、アポカリプスウィッチ4巻の感想を長々と綴ってきたわけですが・・・
いやまじで、本当にすごい作品ですよこれ。個人的には鎌池作品の中で二番目に好きです。ガチで令和の必読書。全人類が読むべきシリーズです。
まだ四冊目なこともあって、禁書などと比べると感想の出回りが少ないので、この機会にぜひ皆さんの感想も聞いてみたいですね。
この記事にはコメントもじゃんじゃん書けますので、よければコメント欄で語り合いましょう。
今回の記事はかなり長くなりすぎてしまいましたが、それでもここまで読んでいただけて本当にありがたく思っています。
今後も新刊が出たら感想を書いていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは今回はこのあたりで。
皆様の想いの華が咲きますよう祈りつつ、本記事を締めさせていただきます。
毎度素晴らしい作品を書いてくださる鎌池作品に特大の感謝を。
以上、白き悪がお送りしました。また次の庭園でお会いいたしましょう!
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